監査調書の作り方

監査調書は、監査法人に勤務する会計士が作成する唯一の製品です。

監査調書が作れない会計士は、どうやってもステップアップできません。

では、評価される監査調書はどんな調書か。

実は、監査基準委員会報告書230「監査調書」第7項に明確に記載されています。

引用しますね。

「監査人は、経験豊富な監査人が、以前に当該監査に関与していなくとも以下の事項を理解できるように、監査調書を作成しなければならない。」

以下の事項を要約すると

  • 監査手続の種類、時期及び範囲
  • 監査の実施結果及び入手した監査証拠
  • 重要事項とその結論及び職業的専門家としての結論

となっています。

要は、

経験豊富な監査人が、初めて見ても、監査手続き、実施結果及び結論がわかるようになっていないといけません。

加えて、なぜその監査手続きを実施したのかわかるように目的が必要です。

では、そのような監査調書をどうやって作るかまとめていきます。

事前準備

良い監査調書は、事前準備が全てです。

事前準備がきちんとできれば、効率的に良い調書が作れます。

スタッフの頃は、だいたい前期の調書があります(私は、最初の現場が新規監査で調書なかったですが)。

前期の調書は、絶対に監査が始まる前に確認しましょう。

大抵の人は確認していると思いますが、何を意識して確認しているでしょうか。

確認すべき事項を見ていきましょう。

なんのためにやっているのか

そもそも、その監査調書はなんのために実施しているのか。

目的を確認しましょう。

目的が明確になっている監査調書は良い調書です。

目的がはっきりしないと、手続きをしていても空振りになることが多いです。

例えば、現預金の実在性を確認することが目的としましょう。

現預金の実在性を立証するためにどのような手続きをすればよいでしょうか。

例えば、実査、確認状との突合などがあると思います。

ここで、簡易キャッシュフローを手続きとして選択すると空振りです。

簡易キャッシュフローは、現預金の増減内容を把握し、異常な増減がないことを確認する手続きです。

そのため、現預金の実在性を直接的に立証することはできません。

監査論的に言えば、証明力の弱い監査手続きとなります。

目的は、複数設定することもできますが1つのほうがわかりやすくていいと思います。

目的が明記されていない監査調書の場合、なぜその監査手続きを実施しているのか確認しておきましょう。

どんな手続きを実施しているのか。なぜその手続きをしているのか

監査手続は、設定した目的を達成するために選択されます。

監査手続は、自由に選択してはいけません。

監査チームで適切に設計された監査手続を実施しないといけません。

なぜなら、監査はチームで実施しているため自分の勘定科目だけ問題なければ完成ではありません。

財務諸表全体に重要な虚偽表示がないかを監査チームで立証するために、勘定科目ごとに手続きが設計されています。

前期に実施した監査手続を確認し、なぜその監査手続を実施しているのかを確認することで、監査手続に漏れがなくなり、効率的に実施することができます。

なぜ実施しているのかわからないまたは、不要に思える監査手続、足りない監査手続があれば先輩に確認しましょう。

確認する相手は、前期にその調書を作成した人がいいと思います。

1年目で実施する勘定科目は、毎年同じ可能性が高いため、質問する相手は2年目の先輩が多いです。

そのため、作成時は不十分だったと後悔の念を持っている(笑)ことが多いので成仏させてあげましょう。

質問の仕方については、別途記事を用意します。

どんな監査証拠を入手しているのか

手続を実施していくなかで、会社からどのような資料を入手しているのか確認しましょう。

また、毎回確認するような内容についても漏れがないように確認しておきましょう。

往査日が初日でなくても、毎回同じ資料や質問している場合には往査しているメンバーに依頼してもらうことも可能ですので、事前準備はしっかりしましょう。

また、不要と思われる資料や質問がないかについても確認しておきましょう。

なんとなく毎回入手しているが使用していない監査資料というのも存在する可能性があります。

入手している資料と調書に使用している資料を見比べて、双方の過不足を確認すると良いでしょう。

また、会社資料を加工して監査調書にすることも多いです。

そのため加工方法についても確認しておきましょう。

加工に時間がかかって、検討する時間がないのは無意味ですので、加工は素早く終わらせましょう。

そのために、EXCELなどで自動化できる部分はどんどん自動化しておきましょう。

手作業のほうが早い場合でも、自動化できるなら自動化しましょう。

なぜなら、他の人にお願いするときに自動化されている方がミスが少ないからです。

監査現場にはいろいろな人が来ます。

加工作業は誰がやっても同じですから、ミスなく素早くできるようにすることを意識しましょう。

どんな監査結果か。

手続の結果どのような結果になったのかを確認しましょう。

問題ない場合には特に事前に準備は不要ですが、翌期に要検討などとなっている場合にはしっかりフォローが必要です。

特に、重要な影響がないため数字を修正しなかったものの、あるべき数字でなかった場合には前期内部統制の不備になっている可能性が高いです。

そこで、当該不備が是正されているかを確認する必要があります。

ここで大切なのは数値が正しいだけでなく、会社の内部統制がどのように修正されたのかを確認しましょう。

結果はあっているものの、内部統制(フロー)は修正されていない場合もありますので要確認です。

業界特有の会計処理はないか

担当している業界特有の会計処理は多かれ少なかれ存在します。

そのような会計処理が影響する科目を担当することになった場合には、事前に十分確認しておきましょう。

専門学校の教科書には出てこない内容になりますので、先輩に質問したり、業界の専門書を確認することで会計処理の内容を理解しておきましょう。

クライアントに質問したいところですが、継続監査の場合、特有の会計処理は監査チームで共有されていなければなりません。

毎回クライアントが説明すると過重な負担になりますので、クライアントに質問するのは避けましょう。

初めての往査で、業界特有の会計処理を知らないと、クライアントから相手にされない可能性もありますのでしっかり準備しておきましょう。

前期と同様の監査手続きで問題ないか

チームミーティングなどで、当期特有の論点があり自分の担当科目に影響するような内容がある場合には、前期と同様の手続で十分かどうかしっかり確認しておきましょう。

影響箇所が複数の勘定科目に及ぶこともあります。

その場合には、同様の手続を複数人で実施することのないように担当者を明確にしておきましょう。

また、直接の影響はないもののマクロ環境の変化などにより追加の手続が必要になることもあります。

その場合にもしっかりキャッチアップしておきましょう。

もちろん、スタッフ自ら手続を考え実施することはないのですが、主査の支持を待つだけでなく主体的に動けるといいと思います。

他のチームでは実施していたのに、このチームでは実施していない。

そのような手続があれば、積極的に主査に確認するといいと思います。

理由があってカットしているのかもしれませんし、単純に漏れている可能性もあります。

複数の現場を担当しているスタッフならではの視点は、主査にとって非常に有益ですのでぜひフィードバックしてください。

実施中

数字の増減に違和感はないか

監査調書で必ず作成するのが、増減分析です。

増減が大きいところを確認するのは、皆さん忘れずに実施すると思います。

しかし、増減が小さい場合には確認しないまま終わってしまっている調書をよく拝見します。

本来増減がなければいけないときに増減していない場合には、確認しないといけません。

例えば、売掛金や買掛金などは月末が休日の場合決済が翌月にスリップし通常月よりも残高が多額になります。

このとき、実際に増減を確認すると前期末比で増減が大きくなかったとすると、会社の売掛金または買掛金のサイクルに変化が生じている可能性がありますので、会社に確認が必要です。

もし、増減だけを確認すると見落とす可能性があります。

増減だけでなく、マクロ環境を理解しどのような増減が生じる可能性があるかをイメージしてから増減分析の結果を確認しましょう。

また、四半期では前期末比だけでなく前年同期比較も実施しましょう。

PLや季節により売上が大きく増減する会社は前年同期を実施していますが、どの会社でも前年同期分析は実施したほうがいいです。

経過勘定などは、前年同期と比較しないと取り崩しなどに気づけない可能性があります。

また、異常な増減は推移を見るとわかりやすいので月次推移を作成し、異常な増減がないかを確認しましょう。

1つの目的に対して文章のボリュームはA4一枚

監査調書は、だいたいEXCELで作成すると思います。

EXCELは、ひとつのシートに多くの情報を入力することが可能です。

作成しているとあれもこれもといろいろな情報を書き込みたくなります。

しかし、レビューする立場からすると一つのシートに大量の情報があると、正直どこを見ていいのかわからなくなります。

また、目的と手続結果がリンクしていない調書もあります。

たとえば、売掛金の実在性を証明したかったのに、様々な手続を集約した結果、手続結果が売掛金の網羅性になっているような場合です。

原則として、一つの目的でEXCELの1シートを使いましょう。

そして、1シートはA4一枚で収まるくらいのボリュームが理想です。

A4一枚以上になる場合には、別シートにしましょう。

調書が紙面の場合には、体裁を気にしないとできないのですが電子化になると、体裁を気にしない人が多いです。

しかし、レビューする立場からすると1シートのあちこちに文章や数値があると見にくいだけです。

せっかく手続したのに、見にくいという理由だけで自分の評価を下げるのはもったいないです。

体裁にこだわり、レビュアーの立場になって調書を作れると周囲に差をつけられると思います。

セルフレビュー

調書を作成したら、必ずセルフレビューをしましょう。

決算期や会社名などの体裁や計算式が壊れていないかなど、ひと目で分かるところは絶対に確認しましょう。

レビューするときにすぐにミスが見つかると、心配になり必要以上に神経質にレビューすることになります。

たまに、体裁くらいレビュアーが直してくれればいいという意見を聞きますし、レビュアー自ら修正している人も多くいます。

しかし、レビュアーが修正し、なんの指摘もしない場合、実施者は問題なかったのだと安心してしまい成長は見込めません。

セルフレビューで少し意識すれば数秒で修正できますから、必ずセルフレビューを実施しましょう。

また、目的と結論がリンクしているかも確認しましょう。

実在性の確認が目的であれば、結論は実在性に重要な問題がないになります。

もし、結論が網羅性に重要な問題がないとの記述担っていると、目的と結論がリンクしていないので監査調書としては不完全です。

調書の目的、手続、実施結果、結論が1本の川のように流れているか確認しましょう。

実施後

レビューをしてもらったら、すぐに反映する

調書は、自分が作成し終わったら終了ではありません。

レビュアーが確認した後、コメントをもらったらすぐに確認しましょう。

どうしてもすぐに対応できないときにも、会社に追加の依頼や質問することがないか確認しましょう。

コメントを放置して、監査報告書日ギリギリで追加の依頼を会社にすることになると最悪です。

また、レビュアーからしてもコメントにすぐ対応してもらえると、コメントを覚えているので確認がしやすいです。

時間が空けば空くほど、コメントの内容を忘れてしまいます。

適時の仕事をすすめるためにも、速やかに対応しましょう。

まとめ

監査調書は、監査業務をする会計士の製品です。

高品質な製品を納期に収めることで、自身の評価が上がります。

監査調書が作れないと残念ながら、自身の評価を上げるのは厳しいです。

どんどん作成してレビューしてもらって、ブラッシュアップしていきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました